第46章

稲垣栄作が別荘に戻ると、使用人は彼の帰宅に少し驚いた様子だった。

「奥さんは?出かけていない?」

稲垣栄作は階段を上りながら、何気なく尋ねた。

使用人は急いで答えた。「奥様はまだ家におられますが、先ほど運転手に指示されて、もうすぐ出かけるとおっしゃっていました」

稲垣栄作の足取りが一瞬止まったが、何も言わなかった。

彼は二階に上がり主寝室のドアを開けると、高橋遥が服を着替え終え、出かける支度を整えているところだった。

シルクのシャツに、マーメイドスカート。

少し禁欲的な美しさがあった。

稲垣栄作は思わず数秒間見入ってしまい、それからスーツの上着を脱ぎ、ソファに腰掛けた。黒い瞳...

ログインして続きを読む